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未来の働き方=リモートワーク? (1)

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Apple社のオフィスビル

Apple最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏が米国時間の6月2日に、9月より少なくとも週3日のオフィス勤務を開始するよう従業員に要請したことに対し、一部の従業員グループが異議を唱えているようだ、という報道がありました。

 

従業員グループの書簡を公表したのは、The Verge(Vox Mediaが運営するアメリカ合衆国の技術系ニュースサイト及びメディアネットワーク)です。その書簡によると、

「リモートワーク/柔軟に仕事場を選ぶ勤務形態に関して、幹部チームの考え方と、多くのAppleの従業員の実体験との間にずれがあるように感じる」

さらに、「われわれの多くは、自分の家族、幸せ、最高の仕事をするための権利と、Appleの一員であることのいずれかを選択しなければならないと感じている」とし、「多くの人はそのような選択をしたくない」

The Vergeによると、「この書簡はApple従業員約80人が執筆、編集した。約2800人のメンバーが所属する、リモート勤務推進派のためのSlackチャネルから始まった」としている。

 

Apple社は、リモートワークを一時的で例外的な措置と考えていたようです。対面でコミュニケーションを取ることで、画期的なビジネスを育むことができるという考え方を、設立時から持っていたようです。Appleの精巧なドーナツ型の本社には、共同創業者Steve Jobs氏の考えが反映されていて、巧みに設計されたオフィス空間が、従業員の間の予期せぬ相互作用を生み、まったく新しいソリューションが生まれるような何気ない会話などにつながるという思考を持っている会社であることで知られています。

 

これと真逆なのは、Facebook社です。Facebookは2021年4月18日、同社従業員は新型コロナウイルスパンデミックの後も自宅で働くことができると改めて発表したのをご存知だろうか?

 

ブルームバーグの報道では、フェイスブックシリコンバレーのオフィスを、2021年5月に定員の10%に限って再稼働する予定で、従業員はマスクの着用、ソーシャルディスタンスを義務付けられ、場合によっては毎週新型コロナウイルスの検査を受けると記事は報じています。

 

2020年5月に、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグは、同社従業員の50%を今後10年以内に完全にリモートワークにしたいと述べています。約1年間の実践でリモートワークが、企業側にとっても高評価だったことが、2021年の発表で知ることができます。

      

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リモートワークに肯定的なのは、FacebookだけではなくTwitter社も同様です。マイクロソフト社は、「リモートワークが認められるのは平均勤務時間の半分以下」としています。

 

とにかく、リモートワークは現時点で賛否両論ですね。

 

わたしは、1987年から約6年間、ソフトウェアの開発の仕事をしていました。最初の3年間はいわゆる設計・仕様書に基づいて1からプログラムを作成する仕事でした。想像通り、長時間労働が当たり前でした。ある時、「社内で使う書類であれば、ミスコピーで生まれた紙の裏面を使え!」と言われて反発していた同僚がいたんです。

 

当時、プロジェクト管理で著名なトム・でマルコとティモシー・リスターによる共著である『ピープルウェア』という本が出版されていて、オフィスでの仕事の仕方や環境に問題を感じていたわたしは、この本に飛びつきました。「ソフトウェア開発社にとっての生産性」にまつわるオフィス環境のあり方を、様々な実験から合理的にあるべき環境を教えてくれています。

 

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で、これを読んで分かったことは、「一回印刷した紙を使って、再度コピー機で印刷すると、未使用の紙でコピーした時よりコストが上がる」ということでした。「えっ?」と思われるかもしれませんが、裏紙を使えというのは、「もったいない」、いわゆるコスト削減だとの「常識」だと思っていたことが、実はそうではないということです。

 

この本では、産業として長く継続し主流だった製造業で「常識」だとされていた職場環境や生産性の向上方法が、ホワイトカラーのオフィスワークには適用できないことを示してくれています。「常識」と思っていたことを再検討することの必要性を痛感しました。

 

新型コロナによるパンデミックは、「常識」を再検討する機会を様々な面に与えていますよね。「働き方」や「オフィス」ということは、その際たるものでしょう。オフィスに集まって仕事をすることの重要性は、次のような考えに支えられてきたと言えます。

組織におけるイノベーションは、協力関係から生まれるものだ。会議などの公式な場、あるいは非公式な廊下などで出会う人々のつながりから協力が生まれ、顔を合わせて協力し合うチームからイノベーションが生まれると考えられてきた。

 

 しかし、これはリモートワークということを考えなかった時代に作られた理屈であり、しかも科学的な根拠もない代物です。

 

わたしが、ITRというリサーチ/コンサルティング企業に在籍していたことですのことですが、内山氏(現在会長)とGartnerを立ち上げ、軌道に乗った頃にGartner本社から会社をたたんで(Gartnerが買収するという意味)専属になるようにリクエストされて、それを断って有限会社ITRから株式会社化して東中野で4名でスタートした時に、どんな会社にしようかとみんなで話し合っていました。その時に「Appleのようにリラックスして寝転びながらミーティングできる部屋を作って欲しい」ということと、日本オラクルの常務だった熊坂さんからいただいたお祝い金で「高くても長時間疲れずに座っていられる椅子が欲しい」とリクエストしたのを覚えています。初期のApple社のオフィスでは、大きなクッションに座ったり寝転んだりしてMachintosh開発チームがミーティングをしており、その風景を写真でみたから、このような環境からアイデアというのは生まれてくるんだ、と勝手に思っていたんです。

 

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つまり、生産性やイノベーションを視野に入れたときに、そういう発想が出てくる時代だったのですよ。それと、目標通りに仕事をこなしていれば、出社時間に拘らない、3時間働いて帰宅することもいとわないという承認を得た、ってことかなあ。少なくともリモートワークなんて考えも及びませんでした。

 

今は、完全に自宅でを仕事をしており、、チームで仕事しているのはわずかなので全く問題なく仕事ができています。妻が料理の不得意な人なので、わたしが調理することになっています。わたしは、腎臓に問題があり野菜を食べるには30分以上水に浸しリンを除去しなければならないのです。つまり下準備のために炒めたりする1時間とか前にちょっとした準備が必要になり、家にいるのでそれも可能なんです。わたしにとっては、大きなメリットですね。

 

実際、コロナ禍でリモートワークを経験した人が、どう感じているかをみてみましょう。このテーマでの調査は、どの産業のどのような仕事をしている集団の調査結果かが結構重要で、結果も違ってくると思われます。ですからランダムな産業調査である方を、まず参照すべきだと思います。

 

社会調査などを手掛ける公益財団法人日本生産性本部が発表した調査の結果を見ます。これは、2020年の5月の調査のようです。

 

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次に、リクルートキャリアが2021年2月17日に発表した、「新型コロナウイルス禍における働く個人・企業の意識調査」の結果は以下の通りでした。

 

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これらから、過半数の人は、「満足している」と言っても良いでしょう。この割合は、オンライン主体のメディア業界のように、多くの従業員がパソコン主体の仕事をしている企業になると、満足度も継続したいという希望も高くなる傾向にあります。

 

では、リモートワークでストレスを感じたかどうかという点はどうでしょうか?リクルートキャリアが1月に行った調査では、新型コロナ感染拡大以降にテレワークをするようになった人に、テレワークにおける仕事上のストレスについて尋ねたところ、「テレワーク開始前にはなかった仕事上のストレスを感じたことがあるか」という問いに対して、「強く感じた」という回答が13.4%、「やや感じた」が46.2%となり、計59.6%が新たなストレスを感じていることが分かったという結果でした。

 

そのストレスはのちに解消できたのでしょうか?ストレス解消状況を年代別にみると、「解消できた」という回答は20代で41.1%、30代で35.4%、40代で32.2%、50~60代で16.4%。年齢が上がるほど長期間にわたってテレワークのストレスを抱えていることが分かります。「解消できていない」という回答は、50~60代では83.6%に上っています

 

では、「どのようなストレスを感じたかというストレスの理由や原因は?」となるとアンケートの取り方つまり回答の選択事項、調査の目的によって多種多様あります。例えば、リモートワークのためのシステムやルールからくるもの、システムの使い方の慣れ不慣れから来るもの、家庭事情から来るもの、仲間との触れ合いから来るものと、様々な要因があるわけです。

 

これらは、テレワークをしている従業員の側から見た結果ですね。次回は、企業の側から見たらどうなるかを眺めてみたいと思います。ぜひ、引き続き読んでみてくださいね。

 

でわでわ