徒然なるしらべにのって!

あの地平線 輝くのは どこかに君を 隠しているから

参議院選挙に向けて思うこと

梅雨明け

北関東付近は梅雨明けしたという報道が流れている。一方、参議院選が公示された。7月10日が開票日です。気になるのは、投票者数です。若者が選挙に行かない、そして行った若者の多くが自民党へ投票する、これが変化するのだろうかということです。

 

 

さて、先日ツイッターを見ていると、内田樹(うちだたつる)さんのツイートで非常に興味深いことを知りました。ちょっと引用させてもらいますと、

 

ダートマス大学のチームが行った直近の衆院選の選挙結果分析ですと、自民党が圧勝したこの選挙で、自民党の政策は他党に比べて高い支持を得ていないそうです。政策別の支持を見ると、自民党原発・エネルギー政策は最下位、経済政策とジェンダー政策はワースト2。コロナ対策と外交安保が僅差で首位。なぜその政策が支持されないのに自民党は勝ち続けるのか。そこで研究チームは政党名を示さないで政策の良否を判断してもらった場合と、政党名を示した場合を比較しました。すると驚くべき結果が示されました。自民党以外の政党の政策であっても「自民党の政策」だというラベルを貼ると支持率が跳ね上がったのです。共産党の外交安保政策は非常に支持率が低いのですが、これを「自民党の政策」として提示すると一気に支持者が増える。つまり、有権者はどの政党がどういう政策を掲げているかではなく「どの政党が権力の座にあるのか」を基準にして投票行動をしているのでした。「最も多くの得票を集めた政党の政策を『正しい』とみなす」という奇習をすでに多くの有権者たちが深く内面化している。今も昔も「勝てば官軍」なんです。

 

 

ちなみにこの記事は、https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/00150/121700013/です。この記事によると、2017年に発表されたMITの山本鉄平准教授らが、最新の統計理論に基づき改良したコンジョイント分析の手法とプログラムを活用して、2014年、17年、21年と3回の総選挙を調査した研究結果だそうだ。

 

コンジョイント分析について堀内勇作氏は以下のように説明されています。

 

コンジョイント分析はもともとマーケティングの領域で使われてきた。実例で説明しよう。ある日筆者は、ジョギング中に装着できるヘッドホンを買いに大手家電量販店に足を運んだ。売り場へ行くと数えきれないほどのヘッドホンがあるが、選びたいのは1つ。いくつかの「属性」が、選択に関係ありそうだ。値段、ブランド、ワイヤレスか否か、ノイズキャンセル機能があるか否か……。このように消費者は様々な「属性」を「総合的に」勘案した上で選択する。 売る側からすると、どのような「属性」が消費者にとって重要で、属性ごとの選択肢(例:色の場合、黒、白、青、赤、など)のそれぞれが選択にどう影響を与えているか知りたいはずだ。その解明に適した手法がコンジョイント分析である。

 

 

これを読んだ時、驚いたがでも「やっぱりそうだったんだ」という気持ちになったというのが正直なところ。IT市場や技術の分析をしていたときによく「レガシー」という言葉を使いました。それは、「古いモノ」という意味で使うこともありますが、過去の成功体験に根ざした教えのように金科玉条となってそこから逃れられないモノやコト、長年続いたものがあたかも「真理」であるかのように認識されるようなコト、といった意味を含んでいます。いってみれば、バイアスの一つです。

 

例えば、食べ物の世界でもこんな実験がありました。一度も料理をしたことのない男性に暫く料理を教えて、世にあるレシピで調理をしてもらい高級な器で綺麗に盛り付けたものと、一流シェフに料理してもらい似たように盛り付けたものを食べ比べてもらう。その時、前者の料理を一流シェフが料理したと前もって偽情報を提供した場合、前者の方が美味しいと全員が答えたという実験結果です。

 

つまり本当の味というモノが解っている訳ではなく、一流シェフが作れば美味しいはずだ、シャネルであれば高価なのは当たり前だ、と言ったバイアスを通して物事を見るわけです。与えられた「属性」(この場合一流シェフが作ったという属性)あるいはバイアスによって判断する訳ですね。それが選挙でも当てはまる、正確にいえば「日本では・・・」というべきなのでしょうが。

 

日本の現在の衆議院選挙制度小選挙区制)では、「1つの選挙区から1人を選ぶ方法で、小党乱立を防ぎ、政局が安定しやすいのがメリットとされています。しかし、少数意見が反映されにくい、小党が不利になる、不正投票の割合が高くなるなどの欠点があります」。何せ、前回の衆議委員選挙では、自民党の絶対得票率は全有権者の26%強に過ぎないのに、獲得議席数は衆院定数(465)の議席占有率65%を占める「絶対安定多数」を獲得しているのです。

 

しかし、ダートマス大学のチームが行った直近の衆院選の選挙結果分析が正しいとすれば、選挙制度がどうあれ、日本の有権者自民党を支持し政権を継続させたわけです。新型コロナ対策で厚生労働省が打ち出したPCR検査抑制という国民の命に関わりかねないことを変更させられなかった自民党政府、官僚たちの書いた原稿を読むだけの自民党政府、防衛費や先進国と横並びの海外援助ならポンと何十兆も出す金を国民の福祉や生活のためには財源は?とかプライマリーバランスの黒字化を盾に渋る財務省を変えられない自民党政府、森友改竄事件で赤木さんという一人の命が失われたのに、真実をひた隠し最後は「認諾」で闇に葬った自民党政府、こんな政府を支持した訳です。

 

日本人の民度の低さには、本当に驚かされてしまう。「明日は我が身かもしれない」とは決して考えない。外国人の友人から「どうして日本人はデモもせず無視していられるんだ」とよく質問されます。まるでロシア国民がプーチン氏を支持しているように日本人は自民党政府を支持している。スリランカを見てみてください、パキスタンを見てみてくっださい。だから日本の政権は、どや顔でいられるわけですよ。

 

ダートマス大学の堀内勇作さんは、

 

そもそも、解散して急ごしらえで準備したマニフェストを、わずか12日しかない選挙運動期間中に有権者が十分に理解し、各党の政策を吟味した上で、最も自分の政策選好に近い政党を選んでいるとは思えない。マニフェスト選挙は、政策本位の政治の実現に役立っているのか。研究結果を踏まえても、一度立ち止まって考えてみる必要がありそうだ。

 

 

とおっしゃていますが、甘やかしてはいけない。まあ、「自民党ブランド」をいつまで後生大事にできるかが見ものです。わたしは「なぜ日本人は戦争に向かったのか?226事件とはなんだったのか?」に関心を持ち勉強しています。それらの歴史的事象は決して特殊な人たちが起こした奇怪な事件ではなく、そこには必然的にそこに至る社会システムの構造的問題に影響受けた「人」や「大衆」、そして「政治的指導者」が存在するということが浮き彫りになってくるんです。

 

作家の永井荷風は日記『断腸亭日乗』に226事件を述懐して次のように述べています。「そは兎もあれ日本現代の禍根は政党の腐敗と軍人の過激思想と国民の自覚なき事の三事なり。政党の腐敗も軍人の暴行も之を要するに一般国民の自覚に乏しきに起因するなり。個人の覚醒せざるがために起ることなり。然り而して個人の覚醒は将来に於てもこれは到底望むべからざる事なるべし。」

 

よく考えてみてほしい、自民党政府は同じことを繰り返ししているではないですか。直近では安倍政権がまさにそうだった。不都合な事実の改竄、そして翻弄され改竄を実行せざるを得なかった赤木さん、最後は赤木さんをスケープゴートにして「認諾」で全てを闇に葬り去ったではないですか。そして何もなかったかのように「いつまで騒いでるの」と雑音であるかのように扱う一般民衆。まさに、永井荷風の言う「政党の腐敗も軍人の暴行も之を要するに一般国民の自覚に乏しきに起因する」と言うことが的確な評価だと思いませんか?

 

そして、戦争が終わってA級戦犯を処刑した直後に、「民主主義バンザイ!」「ギブ・ミー・チョコレート」と微笑みながら占領軍に歩み寄る大衆。この人たちは昨日まで、鬼畜米英を叫び、満蒙は生命線とマスメディアと共に軍を鼓舞していたのですよ。

 

国とは武装をしているもの。しかし、この武器は決して外にだけ向いているのではないことを忘れてはいけない。226事件天安門事件など、多くの事例がそれを示しています。その舵取りをする政府がどんな考えを持った人間達なのかによって、この武器がどこに向かって火を放つのかが決まる。憲法を変えることも私は必要があれば実行すべきだと思うが、どのような政府のもとでどのような改定をするのかが大事だと思う。現行の自民党政府のもとであれば、とくに9条の改定はさせたくはない。本来統治権力に枷をはめるために憲法があるのですが、都合よく国民を統制しようとするような意識の者に触らせてはいけないのです。

 

国民や大衆というものは、時には怖い存在になることは歴史を見れば明白です。絶えず学び続け、不都合な真実を見通し、政府や官僚を監視し、必要があれば声を上げることのできる存在でなければならないのです。それを主権者と呼ぶのですよ。

 

しかし、今多くの有権者は茹でガエル状態。お尻に火がついた時には茹で上がってしまって身動きできない、なんてことになってしまうかもしれない。

 



ところで、参政党という、YouTuberでもある神谷宗弊が立ち上げた政治団体が俄に人気を集めているようですね。面白いのは、元々他党に投票していた人や他党にいた人も集まっているらしい。この団体を立ち上げた動悸やストーリーは非常に面白いし、なるほどと頷ける。そして、政治に参加しようと鼓舞しているのは素晴らしい。ところが神谷宗弊氏は街頭演説ではマニフェストを訴えている様子がない。「今日本は腐っているし、欧米に毒された国になっている。かつての日本人の日本人らしさに覚醒し取って代わって政治を自分の責任で動かそう。」と繰り返し言っているだけのようですね。政策よりもまず哲学だって?そうなんですかねえ?

 

素晴らしいように聞こえる。上記のダートマス大学の研究結果を知って「マニフェストを訴えても国民は判断しないだろう」と訴えない戦略に出ているのかな?(笑)だがです、YouTuberでMMT理論を解かれている評論家の三橋貴明氏によるインタビューでトランプ元大統領を賛美し、おそらく工学者でYouTuberの武田邦彦氏(参政党から出馬)などの影響だと思いますが、「日本人は欧米の考え方ややり方を取り入れてダメになった」とか「脱炭素なんて言っているからダメで、日本の内燃機関の傑作を作れる自動車業界も電気自動車なんか造らずに、化石燃料を炊いても発電すべきだ」ということを唱えている。

 

わたしは、それらに恐れと疑問を感じます。わたしには、参政党に集まっている人たちは、既存政治への不満と結党のストーリーへの共感を主な動機としているのではないかと想像します。わたしはレッテルを貼ることは大嫌いですが、「鎖国でもするんですか?」と聞いてみたくなりません?社会や政治の閉塞感を大衆が感じている時には、ナショナリズムに火をつけられやすく神谷氏の歴史観がまさにそうだと思うんです。

 

しかし、「共産主義者だ赤だ!彼らが国を滅ぼす」と主張し、分断をも持ち込み、大逆事件のように無実のものにレッテルを貼って死にいたらしめた歴史を思い返してください。「我々は素晴らしい日本人なんだ。欧米に支配されるな!」とか「老人至上主義政治を廃して、若者向けの政策を!」とか、その背景には一部納得できる真実を反映しているが、これが国民間の分断を招く原因になる恐れがあることには注意が必要だと思う。ぜひ明石市泉房穂市長の子供支援についての説明を聞いてみてください。決して、老人が豊かになる、市が豊かになることと子供支援をすることを対立させていません。結果もそうはなっていません。

そして、226事件を思い出してください。反乱を指揮した陸軍の将校は、当時娘を売りに出さねばならぬほど疲弊し貧困の状態にいた農村出身の兵隊に給与を分け与えたりしており、つまりそんな世にしたのは腐敗した政治家や政党であると、政府要人を殺害し「天皇中心の軍部による政治」を実現しようとしたわけですね。軍部とは国のために命を投げ打ち、そして尽くす集団の象徴だったのでしょう。これらの将校が決起の理由を演説した時、国民からも共感と激励を受けたというのも事実。腐敗した政治家に対し、無私で潔白な日本人=ナショナリズムを対峙させるわけです。そして、暗殺という手段を正当化し国家を変えようとしたわけですね。動機は純粋で将校達が立ち上がった理由に頷けても、取った手段は間違っていたわけです。

 

何か共通していませんか?参政党が226事件を起こすなどと言っているわけではないのです。頷けることもいっぱいありますが、結党の動悸があまりにも感情的で、ジャパンアズナンバーワンのような間違ったナショナリズムに導かれないかが心配なんです。そして、選挙に行かなかなった有権者が果たして、この参政党を通じて投票しようという気になるのでしょうか?注視したいと思います。しかも、どのような経済政策、エネルギー政策、少子化ジェンダー・教育・・・、を主張するのかみてみたいものです。

 

それと一言、消費税について自民党内部にも100人を超える議員が、消費税5%減税および0%減税を訴えています。なぜこの1点で消費税減税勢力が多数派になるような戦略が組めないんでしょうか?要するに最も最悪な悪党をいかに少数勢力にできるか、ということです。国民はしっかり税金とはどういう性格のもので、消費税がどのような機能を果たしており、減税すればどのようなメリット・デメリットがあるのかを勉強する必要がありますが。茹でガエルには無理だけど、茹でガエルになりそうだと気づいた人は勉強しましょうね。

 

でわでわ