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カリカチャー生成アプリMakeMe:市場投入への道 (2)

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オリンピックが始まりました。柔道や体操そして卓球など多彩な分野で日本選手がメダルを獲得しています。「政治の失策」でオリンピックをめぐって「グダグダ」問題が起こりましたが、それは政治関係者やオリンピック委員会などの方々に徹底的に総括してもらうとして、選手の方々にはエールを送りたいと思います。

 

さて、開発に10ヶ月をかけてカリカチャー生成アプリMakeMeの携帯電話でのサービスを可能にするサーバー・アプリケーションとキオスク版の両方が出来上がってきました。さて、ここから市場開拓が始まります。

 

まず、市場ターゲットを決定しなければなりません。まずどの程度反響があるかを確かめるために、キオスク版を使って作成されたカリカチャー似顔絵をプリクラのようにプリントアウトするようにして外国人も含めて人が集まるところに設置し試してみることにしました。

 

アクセスしたのは、ドンキ・ホーテでした。マーケティング担当のOさんがトンキ・ホーテに知り合いがいたのでそのルートで、建物の一角でキオスク端末を置いて、1週間限定でサービスをさせてもらいました。

 

どんな人が、MakeMeを楽しんだと思いますか?日本人と外国人の反応に違いはあったと思いますか?

 

実際はこうでした。最もこのサービスを楽しんだのは、子連れのお母さんでした。お母さんは、自分の似顔絵を作るのではなく、半分無理やりに子供に「やってみないさいよ」ってやらせてたんです。楽しんでいた最大のポイントは、こうでした。子供の髪の毛を絶対に実際にはしない髪型と色を、取っ替え引っ替えして笑い転げて遊んでいました。「へえ〜そうなんだ。韓国とは違うねえ」と驚きました。

 

外国人と日本人の反応は?まず日本人の反応ですが、ほぼ全ての方が「似てる?似てる?」と似てるかどうかに非常に拘っておられました。それに対して外国人の反応は、「おっ!こんな顔になるんだ、面白い!」と言って素直に喜んでおられたわけです。この時点で、「サービス開始するとちょっと難しい反応が帰ってくのでは?」と不安を感じたのを覚えています。

 

この時点で、適用分野の絞り込みに集中することになるのです。ちょうど知人から、カメラ付き携帯電話が発売され始めているので、携帯電話の販売促進で使えないかとの話も来ていました。

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出典;livedoor

1)エンターテインメント

  ー カメラ付き携帯電話の販促

  ー プリクラのサブシステム

  ー ゲーム用キャラクター作成機

  ー 顔占い

  ー 絵本のカスタマイズサービス

  ー お土産店で商品へのアバターの印刷

2)ビジネス分野

  ー チラシなどで店長や店員などのキャラクター作り

  ー 生産者を紹介するPOP作成

  ー サイト内で会員様のアバターとして

 

これらの分野をプライオリティにして営業・マーケティングを開始しました。もちろん、営業資料も各分野での利活用のアイデアを盛り込んで作成もしました。

 

さてそうこうしているうちに、カメラ付き携帯の販促の話が進展し、数度にわたって大手広告代理店(A社)との打ち合わせを経て、テストを開始しようということになりました。テスト環境の打ち合わせで早速問題発生です。

 

当時、携帯電話コンテンツ・サービスのデータセンターでは、LINUXのみが稼働していました。MakeMeサーバはWindowsサーバとExchangeサーバを使っているために、サポート可能なエンジニアが非常に少ないという問題にぶち当たりました。それと、携帯電話側から写真が送信されて、結果のカリカチャー似顔絵をリターンするまでに3秒以内にしてほしいというリクエストにこたなければなりませんでした。

 

インストールなどはリモートでエンジニアにトレーニングしました。レスポンスの方は、Exchangeサーバが正確に動いていれば2秒以内で結果を返します。さて、最後は、耐久テストです。早朝にテストを開始して、夜中にダウンしました。このテストは1週間近くかかったのですが、順番に徹夜し何かあれば韓国側に連絡して解決に当たるとい日々が続きました。いや〜大変でした。そしてようやくA社から合格の認定が出て、本番のサービスインを迎えることになりました。

 

ワクワクして、本番を迎えどれくらいの人が使っていただけるのか?評判はどうか?をみんなで毎日監視していました。するとA社から目立つクレームがあるという連絡が入りました。それは、「私の顔はこんなに丸くない!」という女性からのクレームだったのです。

 

そのクレームの主の写真と作成されたカリカチャー似顔絵をそれぞれじっくり見比べてみました。ところがです、「どうみても全く同じだよね!」というのがわたし達の見解でした。そういえばと思い出した論文がありました。それは、「人間は正しく自分の顔を認識していない」という研究論文だったのです。特許申請する際に勉強した中にあったのです。つまり、少し自分が理想とするものに近い顔立ちで認識しているというものでした。

 

結局、わたしは5%顎部分の輪郭を細くしてアウトプットするようにプログラムの変更を韓国側に依頼することにしました。まあ、その必要性を説明するのは簡単ではありませんでした。こうしたことで、クレームは無くなったんですよね。げんきんなものです。

 

結果、いろいろ驚くことが発見されました。なんだと思われますか?その最大の一つがこれです。

 

最大の利用者は、40歳代の男性だった」ということです。

 

この事実を社内でいろいろ分析してみたのですが、一番あり得そうな答えはこうでした。男性が社内やクラブの女性との話題づくりで「こんなのあるんだけれどもどうだいやってみる?」「これ俺なんだよ、若いだろう!」なんて楽しんでいるのでは!ということで落ち着きました。

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そうなんです、この手のシステムでコンピュータでは写真の分析から年齢を認識するのは無理だということと、鼻などの顔のパーツや輪郭に似たものが認識されるとカリカチャー似顔絵を作成してしまうという事実です。便器に顔のようなものを描いてサーバに送信している方もいました。

 

さて、いくつかのメディアで取り上げてもらえるようになって問い合わせも増えてきました。ベネッセに営業に行った時です。絵本や学習本で似顔絵を使うことの意義が、韓国の教育雑誌に掲載されていたので、どうだろうかと思って訪問したんです。残念ながら採用には至りませんでしたが、非常に興味深いことを聞かせてもらいました。

 

それは、「家族の方がテキストブックに登場して、教えると子供は数倍早く覚えるんですよ!」というもので、MakeMeで生成した家族の似顔絵を活用すると効果が出るということです。これは、韓国の教育科学者の論文とも一致する内容でした。本当にやってみる価値はあると思いましたが、チャンスがなかったのです(m(_ _)m)。

 

一方、ゲーム用のキャラクター生成については、セガやその他いくつかのゲームソフト開発会社とやりとりしました。セガに関してはプリクラ機を製造されてもいたので同時にプリクラのサブシステムの商談をしておりました。しかし、やはりなかなか首を縦に振ってもらえなかったわけです。確かにゲームユーザーは自分が主人公になりたい願望はあるそうなのですが、技術的に3Dで精度の良いキャラクターでないと使えないというのが結論でした。今の、3Dアバターみたいなもんですね。でもまだ仕上がりの精度は問題でしょうけど。

 

ある日オフィスに出社すると「マイクロソフトの中国から電話がありましたよ」とメッセージをもらい、早速電話してみました。そうすると「MakeMeは面白くて非常に興味がある」とのことでした。マイクロソフトは北京に研究所を置いていたんだです当時。「どういうご要望ですか?」と聞きますと一言「売ってくれ!」と言われました。つまり、Outlookのサブシステムとして使いたいということらしく、「アバター付きメール」みたいなものでしょうか、詳細は分かりません。

 

わたしの中では、即座に「No!」という答えがありました。「そんな狭い世界でMakeMeの使い道が限定されてしうのは嫌だ、もっと可能性はいっぱいあるんだ!」というのがわたしの思いでした。まあ、投資家さん達には一つのExitだったかもしれませんが(m(_ _)m)。

 

顔占いの分野では面白い提案ができていました。顔占いのサービスサイトを見ていますと、自分の判断で、似た形の目、鼻、耳、眉毛、ほくろの位置などを選べば、占いの結果を出力するという主導のものばかりでした。MakeMeの場合は、データベースにある顔の顔のパーツを選び出してくるので、それぞれに占いを紐づけておけば自動的にコンピュータが分析をして占いの意味を出力するのでもっと占いとしてのリアリティがあるわけです。

 

セイコーが顔占いサイトを提供していて、そこに提案したところ採用してもらうことができました。さらに、OZmagagineのオンラインサイトで一ひねりした顔占いをやってみようということで出てきたアイデアが、「男女で遊ぶ顔相性恋占い」でした。このアイデアを聞いた時は「これは面白い!」と本当に思いました。

 

サービスが開始されて、多くのアクセスがあったらしくとても喜んでもらいました。アイデア次第でこのユニークなカリカチャー似顔絵生成システムを使えばこんなに面白いサービスになるんだと改めて感心した次第です。

 

さあ、次がわたしのCubicmoreでの最後の仕事になった案件です。ヘラクレスに上場していたあるゲーム開発会社(N社)からきた案件です。彼らは香港と中国に進出していて苦労している最中でした。案件は、第九城市(?)だったか上海の大手オンラインゲームサイトを運営する会社です。当時は、北京のセイダイか上海の第九城市(?)かと言われていた時代です。セイダイはその後NASDAQ市場に上場を果たしましたね。

 

N社は、これが中国初案件になると鼻息が荒かったのを覚えています。提案は、第九城市のオンラインゲームのキャラクターが着ているボディにMakeMeで作ったユーザーの似顔をドッキングさせて印刷したりできるようにするサービスです。やはりユーザーはゲームの主人公になりたがるんですね。

 

これは、Webサイトでのサービスだったために結構なカスタマイズが必要になりましたが、無事サービスインしました。

 

このようにして、MakeMeを通じて初めてゲームなどのエンターテインメントやマーケティング・コンテンツというものを学びました。特に、似顔絵が持つユニークなインパクトを学ことができました。このよなブログの書き手さんも似顔絵やアバターをよく使いますよね。色々な意味があるのでしょうが、少なくとも見た人に与えるマイルドな印象と匿名性が同居していますよね。

 

最新の顔認証技術を使えばもっと活用場面は広がります。機会があればもう一度チャレンジしてみたいと思います。そんな面白いプロジェクトでした。