徒然なるしらべにのって!

あの地平線 輝くのは どこかに君を 隠しているから

財政政策「仁義なき戦い」に物申す!

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自民党内部で面白い現象が起きている。それは、積極財政派と緊縮財政派の論争です。まるで、自民党内で2大政党政治が実現しているかのような錯覚すら覚える。MMT貨幣論を支持し積極財政を推進する西田昌司参議院議委員を本部長とする『財政政策検討本部』、方や、岸田文雄首相(同党総裁)直轄の『財政健全化推進本部』でです。

 

面白いことに、『財政政策検討本部』の最高顧問が安倍前総理、顧問が高市早苗自民党政調会長であり、『財政健全化推進本部』には麻生副総理が最高顧問ついているということです。本来与野党の最大の争点だと思われたものが、自民党によって吸い取られ、マスコミによって大々的に報道されると言うことになるのでしょうね。下手をすると、野党は完全に陰に隠れてしまうことになるかもしれませんね。

 

岸田総理は、「コロナ対策と中長期的な財政健全化は決して矛盾はしない」と強調し、年明けにも基礎的財政収支プライマリーバランス、PB)黒字化を目指す財政健全化目標年度の検証議論を行うと述べました。おそらく、黒字化年度を数年先に伸ばして、国債を発行することで若干の積極財政的ポーズを取るのではないかと思われます。

 

過去を振り返ってください。1970年代つまり高度経済成長終焉あたりから国債問題はクローズアップされてきました。三木内閣のオイルショックによる景気悪化がきっかけですね。日本だけではなく国際的にも同様の状況で国債発行が進みました。その後、財政再建に各国が取り組みます。日本においても然りで、鈴木善幸元首相が『増税なき財政再建』を掲げて行財政改革に着手しましたが、鈴木元首相が掲げた財政再建目標(50年代に特例債依存体質から脱却)の達成が不可能であることが明らかになり、財政健全化目標を先送りにしました。

 

小泉元首相時代には、『聖域なき歳出削減』として中期的なプライマリーバランスの黒字化や一般会計の新規発行国債を30兆円以下にするという目標 を立てたのですが、若干財政が健全化したように見えたはしましたが結局挫折することになりました。その後も次々と財政健全化目標を立てますが、次々に先送りにしてきたのです。

 

岸田総理はどうだろうか?最初は、プライマリーバランス黒字化は場合によっては先送りをする必要もあるといいながら、2025年プライマリーバランス黒字化を目指す方向に変貌しているのです。

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財政健全化は、アメリカをはじめ先進国で実施してきているのですが、日本だけが長きにわたってどうも成功していないようです。その理由には様々な分析があるのですが、財政再建には財政規律の設定や財政ルールの堅持が重要とされ、日本は財政再建に失敗したのはそうした財政規律の欠如にあったと結論づけるものがあります。予算編成上の財政規律ルールが重要な役割を果たしているが、財政規律ルールあるいは財政健全化の目標を実現するためには、有効な歳出削減と歳入強化の具体策によって左右されるとされます。

 

良い例としては、1981年に成立したレーガン政権の新自由主義による財政再建の失敗と、1993 年、12年ぶりの民主党出身のクリントン政権の時代の財政健全化を比較してみるのも良いかのしれません。

 

ともあれ今重要なことは、財務省やマスコミが流布している「特例国債=借金」と言う考え方が誤りであるという認識を持つことです。国債というものの仕組みを知れば明らかなのですが、多くの国民は、その知識を持つ努力ができないでいるという現状もあります。その「無知」に漬け込んで矢野財務次官が「財政破綻に近づいていく」という立場もわきまえぬ無責任な論文を発表し、国民の動揺を掻き立てる輩も出てくるのです。財務省はホームページ上に「デフォルト(破綻)しない」とすでに明言していることに留意されたい。この点の理解は多くの識者が語っておられるので参考にしていただきたい。

 

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では、積極財政か緊縮財政かを考える際にまず重要なことは、第1に経済状況の現局面の認識です。そのためには、さまざまなデータから詳細な分析が必要になります。景気状況だけでなく、生産、投資、金利、物価、為替、貿易、株式市況、雇用、食料、賃金、社会保障、公共料金、税制、国家財政と地方自治体の行財政問題などなど、多方面にわたっての分析と経済・景気の局面判断が必要です。単にインフレかデフレかという大雑把な認識では不十分ですね。

 

そして、歴史的段階つまり法律と同じで過去のある特定の状況下で必要だったルールが現在も適用されていて、それが陳腐化していないかどうかという判断も重要です。陳腐化しており現行に合わないものは積極的にアップデートする必要があります。例えば、各種の特別措置や優遇税制を全面的に見直し整理した場合、新たに追加される税収規模は想像以上に大きなものです。従来この重要な問題にかんする具体的研究はほとんど公表されたものはないのが現状です。

 

次に、これが最も重要なのですが、何をどのような時間軸でどうしたいのかという政策目標が定めなければなりません。財政・予算政策というのは、政府の政治政策のまさに鏡です。予算規模と分配項目が決められねばなりません。もちろんここには政治的思惑や力関係がモロに出てきますからしっかり監視すべきです。そして次に財源の話になるでしょう。赤字国債の発行が、その補填する歳出の規模と内容の点からみて、国民経済の早期回復をもたらす効果が期待できるのかどうかの説明は必須ですね。予算の景気への影響を考えるにはその規模や伸び率だけでなく、より重要なその使途・内容を具体的に検討してみなければなりません。

 

いうまでもなく財政の根本問題は、資源と所得の再分配にあります。国家はそれを資本主義経済のなりゆきにまかせるのではなく、その時々の政策目的に応じて積極的調整を行う責任を負っているはずです。

 

過去の政府予算案にたいする一般の反応をみると、そこには二つの全く異なる立場からの批判が提出されていることに気づきます。一つは、この予算が、高い国債依存率になっている割には規模と伸び率が意外に抑制的であり、この程度の財政ではとうてい現在の深刻な不景気を浮揚させる効果は期待できないとする批判であり、主としてジャーナリズムや産業界に多い批判です(A論とする)。もう一つは、革新系の理論家や政治家たちにかなり共通してみられた批判で、巨額の赤字国債にたよる財政は当然インフレの再燃につながるから反対だと主張する議論です(B論とする)A論は、不況克服のためにはもっと積極的な赤宇予算を組めといい、B論はインフレにつながる赤字予算には絶対反対だという。この二つの議論がかみ合わず、互いに機械的に対立していることがありました

 

この問題の解決には、不況時における赤宇予算の問題、それとインフレとの関係についての理論的な整理が不可欠ですが、まずもってこの二つの議論は、ともに真実の一面を反映しており、必ずしも機械的対立に走る根拠のないものだということを指摘しておく必要があると思われます。その理由を端的に示すと次のようになります。

 

仮りにA論に従って、この赤字予算によっても不況の克服ができず、生産の回復がはかばかしくないとすると、税収の回復も期待できず既発行国債の償還もすすまないことになるので、ついにはその利払いのためにまた国債を増発しなければならいという破局的事態が到来します。こうして雪だるまのように増大していく国債の引受け手は結局中央銀行以外になくなり通貨供給の激増をつうじてB論が危惧しているような財政インフレーションの悪化を招くことになる。

 

事態の発展がこうなるとすると、A論はB論に反対できなくなります。しかし、この議論で、もしA論が否定されることになると、すなわちもし仮りに、赤字予算のテコ入れによってA論とは反対に生産と景気が回復の軌道に乗ってくるとすれば、収益も回復し、それによって一旦発行された赤字国債の償却も進み、必ずしもインフレの再燃をもたらすとはいえなくなる。このように、両論の対立は全く機械的なものであり、本質的な対立ではなかったことが明らかになります。

 

赤字国債は、いついかなる場合でもインフレをもたらすとはいえません。政府は赤字国債の発行をつうじて貯蓄形態にある貨幣資本の一部を動員することができます。このこと自体はインフレーションとは関係がありません。国家が、これらの資金を生産的資本の蓄積(投資)にふり向けるか社会保障など消費目的の所得に変えるかということも、インフレとは関係がありません。予算の赤字とインフレーションとのあいだには、本来は、直接的な因果関係は存在しないのです。

 

深刻な不況下において、資本の投資・蓄積活動が衰え、巨額の遊休資金が企業の内部に私蔵されているような場合、これらのいわゆる過剰流動性国債あるいは公債として吸収し、公的目的に動員することは、この資金の、その後の用途が消費向けか蓄積向けであるかに関係なく、経済の活性化につながっていきます。

 

赤字国債が経済にあたえる影響を評価するに当っては慎重であるべきです。大規模な国債発行がインフレと結びつくか否かは、第一にその発行条件、とくにその調達の方法、消化の手段と見とおし、貸付資本市場の状態や引受け利子率の如何などに係わっており、さらにその発行後における一般的経済状態のなりゆき、税収の如何などによって左右されます。発行される国債をすべて貸付資本市場で調達することは民間の資金需要との合からも困難です。従って通常、その一部または相当部分が中央銀行の引受けとなり、それは通貨の増発を引き起こします。問題はそれが、生産の増加・商品流通の増大とパランスをとりうるか否かです。わが国の場合、国債の主な引受者は民間金融機関であっても、一年後には日銀の行う買オペの対象とすることができるので、中央銀行の引受け=通貨増発が生じることに変りはありません。このルートを通じての通貨供給の人は、そのときの品流通量には関係なく行われるので、それはインフレーション進行の潛在的な危険性をはらんでいます。この潜在的な危険性が現実の財政インフレに転化するかどうかは、この国債によって動員された資金がはたして経済にたいし有効な使途に向けられたか否か、それが国の一般的経済状態の改善に役立っているか否かは、この国債償還の方途と見通しの如何、などに係わっているのです。

 

ポイントは、現在の経済状況の分析、それを踏まえて経済や国民生活のゴールをどう設定するのか、この国債によって動員された資金がはたして経済にたいし有効な使途に向けられたか否か、それが国の一般的経済状態の改善に役立っているか否か、なのです。私たちはこれらをしっかり監視し、必要があれば声を上げなければなりません。

 

岸田政権の予算案とアメリカのバイデン政権の予算政策を比較してみることをお勧めします。政権は、就任100日以内で3つの大きな財政支出計画を相次いでまとめ上げました。そのスピードと規模の大きさは驚くべきもので、1930年代の世界大恐慌を受けて成立し、ニューディール政策を推進したルーズベルト政権に肩を並べるとも表されています。3つの計画で総額、単純に合計すると6兆ドル、日本円で約600兆円という巨額で、アメリカのGDPの約3割の規模になります。これに対して日本の追加経済対策は、昨年12月にまとまったものですが、32兆円代。対GDP比6%に相当します。アメリカの財政支出規模が、いかに巨大かということがわかります。

 

さて、規模もすごいですが、重要なことはその使途です。

 

第1の計画は「米国救済計画」と呼ばれるもので、短期的にコロナ禍で打撃を受けた国民と企業を下支えする仕組みで、今年から来年にかけて集中的に1.9兆ドルを出すという計画です。

第2番目は、「米国雇用計画」と呼ばれていまして、こちらは、インフラ投資が中心で、今後8年間かけて2.3兆ドル。

第3番目の「米国家族計画」と呼ばれるものは、個人や家族に対して、教育や子育てを中心にした支援で、今後10年間で1.8兆ドル規模となっています。

 

「雇用計画」というのは、とりわけインフラ投資に重点を置いています。老朽化したインフラの改善だけでなく、デジタル化、脱炭素化していく米国経済の未来に適合的なインフラを整備し、未来志向の投資計画となってます。「家族計画」というのは、個人および家族への支援です。人への投資と特徴づけることができます。具体的には、第一に教育、二番目に子育て支援、三番目に、勤労者と家族を支援するための税額控除制度の拡充、こういった3つの要素からなっています。

 

教育について、全国民を対象とした2年間のコミュニティカレッジ、日本では短大に相当するものですが、それを無償化します。そして、すべての3・4歳児に無料で、高品質のプリスクールというか、就学前の学習機会を提供するという大胆な政策が打ち出されています。2つ目の子育て支援についても、チャイルドケア利用の負担軽減などが盛り込まれています。3つ目は税額控除で、低所得世帯に対しては子育て費用、その他の家族を扶養する費用を税金から差し引く控除対象の拡大・充実が謳われています。

 

アメリカの議会予算局では大幅な今回の財政支出拡大によって、2022年までは大幅な財政赤字を計上すると見込まれています。が、成長で税収が増えるほか、予定されている法人税率の引き上げとか、富裕層への課税とか、そういった増税措置が取られることによって財政は均衡に向かうと見込まれているのです。一連の計画は、米国経済を急速に成長軌道に戻して、さらに将来にわたって成長を加速すると見込まれています。

 

日本の場合、いまだに物的投資を投資と考える傾向にあって、アメリカの計画は教育や子育て支援「人への投資」として捉えられていて、そして、10年間で約200兆円もの資金を投下していくというわけですから、人的資本形成を通してアメリカ経済の将来の成長を高めることに寄与するだろうと思います。つまり雨イカの場合は、明らかな未来志向の財政政策だといえます。

 

さて、皆さんどう思われますか?

 

ではでは